高尾山のクモは世界一
新海栄一

ムツトゲイセキグモは糸の先に粘球を吊し、これを回転させて獲物を捕らえる。この投げ縄行動は、あきる野市で世界で最初に撮影された。
高校時代、高尾山に毎週のように通ってクモの調査を行った。高尾山は植物も昆虫も豊富でクモの種類も実に多かった。1969年この高尾山のクモを主体に東亜(現日本)蜘蛛学会から「東京都産真正蜘蛛類」を出版した。収録種数は 339種であったが当時としては都道府県別リストで最高の種数であった。その後、学研の図鑑シリーズにクモが取り上げられることが決まり、図鑑収録用のクモの写真撮影と生息状況調査で日本全国を巡ることになった。この時の調査で日本に生息している南方系と北方系のクモをはじめとする多くのクモの全国における分布概要を把握する事ができた。「学研の図鑑・クモ」(中平清監修、、松本誠治・新海栄一・小野展嗣共著)は1976年に出版され、その後の日本のクモ研究の教科書的存在となった。学研の図鑑発行から50年、日本のクモ研究は急速に発展し、各地のクモ調査も進んできたことから、私も2021年に50年ぶりに「東京都産クモ類」を発表した。収録種数は50年前より 342種増えて 681種を記録した。この種数は50年前と同じように全国1位となっている。因みに高尾山のクモは現在 440種に達しており、登山客数と同様に山地・山塊として世界一の種数を誇っている。

新海栄一 (東京蜘蛛談話会会長)
1948年東京都国分寺市生れ。中学時代よりクモの研究を始める。高校1年の時、東亜(現日本)蜘蛛学会入会。主な業績としては、日本列島のクモ相の全容解明、造網性クモ類の網型61種類の解明、アジアで最初のナゲナワグモの発見等がある。 現在東京蜘蛛談話会会長。「ネイチャーガイド日本のクモ」(文一総合出版)、「フィールド図鑑・クモ」(東海大学出版会)、「田んぼの生きものたち・クモ」(農山漁村文化協会)など著書多数。